富山県 薬師岳〜黒部五郎岳(三日目)

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一日目(7/14)
折立(AM7:22)→太郎平小屋(AM11:12)   
行動(休憩含む)時間(3時間50分)



二日目(7/15)
太郎平小屋(AM5:53)→北ノ俣岳(AM7:24)→風雨のため待機→撤退→太郎平小屋(AM9:42)
行動(休憩含む)時間(3時間49分) 

太郎平小屋(PM0:03)→薬師平(PM0:53)→薬師岳山荘(PM1:29)→薬師岳山頂(PM2:32)→薬師岳山頂(PM2:39)→薬師平(PM3:44)→太郎平小屋(PM4:31)
行動(休憩含む)時間(4時間28分) 


三日目(7/16)
太郎平小屋(AM4:29)→北ノ俣岳(AM6:09)→赤木岳(AM7:10)→中俣乗越(AM8:06)→黒部五郎岳の肩(AM9:22)→黒部五郎岳山頂(AM9:37)→黒部五郎岳山頂出発(AM9:50)→黒部五郎岳の肩(AM10:03)→中俣乗越(AM11:08)→赤木岳(PM0:08)→北ノ俣岳(PM0:53)→太郎平小屋(PM2:15)
行動(休憩・道迷い全て含む)時間(9時間46分)

太郎平小屋(PM2:59)→折立(PM6:02)   
行動(休憩含む)時間(3時間3分)

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3日目
AM3:00起床。当然、小屋内は真っ暗。ヘッドライトを使いながらの準備。しかし、外は風が強い。おまけにガスっている様子。弁当にしてもらった朝食一人分を同行者と半分ずつ食べ、風が強いため様子見。しかし弱まる様子もなく、少しだけ明るくなったAM4:29に太郎平小屋を出発。

雨が落ちていないため昨日よりマシと言えばマシではあるが視界はよろしくなく、おまけに風は昨日に負けないくらいに強い。天気予報では晴れるとのことであったが、当たるのかな??

太郎平小屋出発間もないころ(ガスっている)


岩ゴロゴロの道


神岡新道合流手前の雪渓(視界悪し)

昨日通った道を進むため精神的には楽。太郎山へと登る木道から始まり、ガレ場の登り、雪渓、神岡新道との合流地点と過ぎ、AM6:09。北ノ俣岳頂上到着。

この日の頂上もやはり強風。吹き飛ばされるかと思うくらい。ここにあるケルンで福井からいらっしゃった方としばらく話す。この方、「水晶小屋まで行こうかと思ったが、この分だと風も強いし天気も良くなりそうにないし、このまま引き返すかもしれない」とのこと。我々もその言葉に少々考えさせられたが、今回の最大の目的は昨年、天候不良のために断念せざるを得なかった黒部五郎岳の頂に立つこと。天気予報では雷の確立もかなり低く、多少の風や霧ならば強行突破するつもり。福井の方に「もう少し先へ進んで様子をみます」と言い残し、出発。

北ノ俣岳山頂(台風並みの強風)

非常に風の強い稜線を進む。視界も非常に悪し。でも天気が良ければきっと絶景なんだろうなって思いながら歩く。傾斜のある雪渓なども通過し、しばらく進むといきなりトラバースする岩場が現れる。霧で湿ってしまったせいなのか、岩が滑る。同行者のストックも自分が持ち、三点支持で進むように促す。でも自分はというと三点支持をしていない(笑)。二点支持である。100mくらい進むと標識発見。これが赤木岳標識AM7:10着。この標識を過ぎてもまだ100mくらいの岩場を進むと下りに入る。これで岩場は終わり。

傾斜のある雪渓を上から


赤木岳標識

このあとは比較的安全な道。といっても傾斜のある雪渓があったり進むべく道がガスで見えなかったりで少々の怖さもありながらアップダウンの道を進む。この時期は雪渓が多く、アイゼンは必要ないとは思うがストックはあったほうがよいと思う。傾斜のある雪渓を下る時はやはり怖さがある。

しばらく進み、黒部五郎岳への登りだろうと思われる場所に差し掛かると、先程北ノ俣岳で別れた福井の方と昨日、薬師岳山頂でお会いした四人組のおじさま達に追い抜かれた。福井の方は四人組にそそのかされた?とおっしゃっていた(笑)また四人組のおじさま達は「頂上で待ってるよ〜」と我々に言い残し、去っていった。ここで水分・食料補給。さらに進む。

AM8:06。中俣乗越と思われる場所を通過。ここには標識もなく雪渓が盛られて?いる。しかも道標がなく、しばらく迷ってしまう。約5分くらいだろうか。深い霧の中、周囲を行ったりきたりしていると向こうのほうから人影が。聞くと黒部五郎小舎からいらっしゃったとのこと。これで進行方向がわかった!先へ進む。

中俣乗越?の雪渓

ここからも下ったり登ったりの道。視界が相変わらずのため、どんな場所を歩いているのか全くわからず少々不安。とにかくガスでどこを歩いているのかがわからず、「おそらくここだろう。おそらくあと何分くらいだろう」などの勘で考えるしかないのが一番の不安。

黒部五郎岳の肩へ向かう急登手前の変わったピーク

黒部五郎岳の肩へ向かう急登に差し掛かると岩ゴロゴロ状態はさらに増し、岩場の間にかろうじて道が作られているような状態。上に進むにしたがって傾斜は急になり、また風は増すばかりで息苦しくなってくる。上を見上げても黒部五郎岳の肩らしきものは全く見えず(視界がかなり悪いのもあるが)、一体、いつになったら着くのだろうか。途中、下山されてきている方に頂上からここまでどのくらいかかったかを聞いた。「30分」と言われたので「45分」はかかるなぁって解釈した。よく「ここから頂上までどのくらい?」って聞く方がいらっしゃるがこの質問はおかしな聞き方だと思っている。当然、個人差もあるし、下ってきた方に登りの時間を聞くのはピストンされている方のみ。あとは相手を困らせるだけ。同行者もさすがに連日の荒行?で疲労困憊気味でヘロヘロ状態。とうとう、座り込んでしまった。まずはアミノ酸サプリを飲んでもらう。しかし、すぐに回復するものでもない。ここで苦汁の決断。「もう、ここまで良く頑張った。またくればいい。引き返してもいいんだよ」と話しかける。しばらく間があり・・・・・「もう少し進んでみる」とのこと。いや〜あ。いつからこんなに根性が付いたのだろうか。びっくりである。とにかく同行者には「ゆっくりでいいから」・「小股でいいから」と連呼しながら進む。ガスって見えないが、どう考えても黒部五郎岳の肩までは10分〜15分くらいの場所だと思っている。ゆっくりゆっくり超牛歩で登る。

黒部五郎岳の肩への急登 1


黒部五郎岳の肩への急登 2

すると約10分後。前方に尾根らしき姿が見えてきた。間違いなく肩だ。これで俄然、気持ちが高ぶる。ここからはつづら折でなく斜め一本道。

AM9:22。とうとう、黒部五郎岳の肩に到着。ここには黒部五郎小舎さんが作成した標識が建っており、カールコースはまた残雪が多くて通行禁止。稜線コースを通るようにとの看板あり。左手に大きな雪渓を見ながら頂上に向けて最後の登り。大きな岩ゴロゴロの道を縫うように進む。しかし、肩までの急登よりは傾斜がゆるやかで楽ちん。濃霧のため「○」印を見落とさないように慎重に進む。ところどころ間違いそうな箇所もあるため、自分だけわかるようにマーキング(小さなケルンを作る)をして帰り道に迷わないように登る。すると真っ白なガスの向こうから聞き覚えのある「遅かったね」の声。四人組のおじさん達だ!そのおじさん達の前を失礼して山頂標識へ。

黒部五郎岳の肩から山頂方面を見る


黒部五郎岳山頂へ向かって 1


黒部五郎岳山頂へ向かって 2

そしてとうとうAM9:37。黒部五郎岳登頂。こんなに苦しい登頂は初めてだ!自分がということではなく(元高校球児はこのくらいではへこたれません(笑))、同行者がこれほどにも苦しんでしかも頑張って来ることが出来たのはとっても感慨深い。島崎三歩ではないが「よく頑張った!」と言ってあげたい。彼女の頑張って登っている姿を見て、感動させられたのは今までの登山で初めて。おそらく今までで一番苦しい登山だったのではないだろうか。



            山頂標識                               三角点

ところで山頂からの景色はというと・・・・真っ白。何にも見えないよ〜。周りはガズ・ガズ・ガズ。早速、先に着かれていた福井のおじさまに写真を撮っていただき、しばらくは登頂の余韻に浸る。晴れていれば槍穂や雲の平・鷲羽・水晶・薬師・そして黒部五郎のカールなどなど。絶景を見ることが出来るはずなのに〜(泣)。そんなことで景色を楽しむことも出来ず、今日のうちに折立まで下山しないといけないので、四人組のおじさんにも挨拶をし早々に山頂を後にする(AM9:50)。

肩までは間違えたら雪渓沿いを歩けばいいとわかっているので順調に進めた。実はこの後、アクシデントが。かなり危なかったのであった。黒部五郎小舎方面から縦走されてきたお兄ちゃんとちょうど肩のところで出会い、一緒に歩くことになった。そして先を進むそのお兄ちゃんと同行者が急斜面をずるずると下りてゆくのである。自分も一緒についてゆくが何だか変な感じ。こんな道、通ったけ?そう思っている間も雪渓沿いの砂地をどんどん降下。約3分ほど進んだところで「ちょっと待った!」と同行者を止める。明らかに道を間違えている。そこに同行者とお兄ちゃんを残し、自分は超急斜面を駆け上がる、そしておそらく正しいと思われる道の方面へと岩場をトラバースし、肩方面と下を眺める。正直、不安がいっぱい。道に迷ってしまったのである。「どうすればよいだろう?」そう思った瞬間。約10秒間くらいだろうか。自分の周り数キロの視界がパ〜っと開けたのであった。そして正しい道を発見。その時に明らかに道を誤っていたことが判明。すぐに同行者に正しい道を知らせ、どう進めばいいかを指示。指示し終わった時には視界は先程のように真っ白。同行者は「道なき道を進むように指示」した自分を疑っていたようだが、「いいから言われたとおりにしろ!」と命令した。そして正しい道へと出たのであった。今、考えてもあの霧が晴れた10秒間は「神さまが助けてくださった」としか思えない、不思議で本当にありがたい出来事であった。

ここからは今日、来た道を戻るのみ。といっても長〜い道のり。相変わらず、強風とガスの中を歩く。帰りもこの調子なのかぁ〜と少々暗い気持ちになりながら歩いていると、ちょうど地面に埋まった【中俣乗俣⇔黒部五郎岳】の標識あたりに差し掛ったあたりになると青空が顔を出してきた。それと同時に視界が徐々に開けてくる。

登り時より視界良し

中俣乗越の雪渓も過ぎ、しばらく進むと右手には待ちに待った絶景が。薬師岳〜赤牛岳。手前には雲の平。前後には稜線に続くクネクネとした登山道。後ろを振り返ると黒部五郎岳の頂であろう場所が見える。待ってましたよ!この景色。これを見たいがために今回、このルートを選んだんだから。このあとはすぐにまたガスってしまい先程の強風+ガスへと戻ってしまうが、それまでの間は至福の時間であった。素晴らしい風景・光景。これらを目の当たりにした時って自然が本当に愛おしくなる。こんなに素晴らしいものを人間の手によって絶対に失ってはいけないって心から思うときでもあった。

赤牛岳方面


帰り道の稜線


薬師岳方面

しかし、視界の晴れた時はそう長くは続かず、強風+ガスに戻ってしまった登山道は苦行の道(笑)へと化す。段々と足が張ってはくるし、登頂後の心は達成感と安堵感が強くて、どうしても気が緩んでしまう。行きに通過した雪渓や登り下りを通過し、ようやくPM0:08赤木岳通過。
ここは要注意。鋭利な刃物のような角を持った岩もあるため慎重な気持ちを持って進む。ここからも長く感じる。

赤木岳付近の岩場

そしてようやくようやくPM0:53北ノ俣岳山頂通過。
昨日、そして今朝同様に風が強い。このコースで最も風が強いのがひょっとするとこの山頂かもしれないって思う。台風並みである。
さあ、ここからは慣れた道。徐々に視界が回復。今までには見ることの出来なかった池塘などの存在も確認出来た。そしてこのあたりで予期せぬ出来事。とうとう来てしまった。持病の膝痛。念のため上等のサポーターを購入して用意しておいたのが幸い。膝を固定するイメージでこれをきつく装着。激痛はするものの装着しないよりはずっとマシ。
すると遥か前方に赤い屋根の太郎平小屋が見えてきた。近く見えるがあと30分以上はかかりそう。

池塘


赤い屋根が太郎平小屋

やがて木道に差し掛かり、最後に太郎山を下り、PM2:15。太郎平小屋到着。

太郎平小屋到着(薬師岳方面を望む)

9時間46分のロングランピストンであった。正直、メチャメチャ疲れたよ〜。でもこの後はさらに折立まで下山しないといけない。残っている弁当を食べ、デポしていたザックを回収し、そして二日間お世話になった小屋の受付担当のお兄さんとお姉さんに挨拶をしてPM2:59太郎平小屋出発。

この頃になると薬師岳を含む富山県側は快晴。目の前には鍬崎山、そして右手にはようやく今になって全容を現した薬師岳を見ながらの下山。とっても気持ちがいいが、今となっては寂しさのほうが強い。
下山が進むにつれて膝の痛みはさらに増し、とうとう「ロキソニン」を服用してしまった。これで少しでも効いてくれればいいが。この痛みに耐えながら五光岩ベンチを通過、左手には有峰湖、目の前には鍬崎山、そして右手には薬師岳、そしてそしてさらに右斜め前方には室堂高原と立山連峰そして剣岳が姿を現したのである。特に剣岳については「どうだ!文句あるか!」と言っているかのような存在感たっぷりの様子であった。
さらに痛みは増し、三角点、アラレちゃんの標識を過ぎ、歯を食いしばりながらPM6:02。折立登山口に到着。

下山中、薬師岳をアップ


鍬崎山とこれから歩く歩道


剣岳と立山連峰

いや〜あ。長かったよ〜。特に北ノ俣岳からここ折立までは膝痛との戦いであった。今回も昨年同様、北アルプスの山旅は天候には恵まれませんでした。とっても残念です。
でも一年越しだった黒部五郎岳登頂は果たせましたし、薬師岳にも無事に登頂出来たことは大変嬉しく思います。
そうです。兎にも角にも無事に下山出来たことにまずは感謝をしなければいけません。遭難しかかったんですから。

いつになるかわかりませんが、天気予報とにらめっこしながら「薬師岳〜黒部五郎岳〜鷲羽岳〜水晶岳→高天原山荘で温泉に浸かる」のようなダイヤモンドコース一周をしたいと思います。やっぱりこの山域は秘境だらけで魅力たっぷりのはずですから。


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12.7.14〜16