鳥 海 山

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岩木山登山を無事に終えて一気に鳥海山麓へ。長い距離で運転も大変だった。
それでも日が暮れる前に鳥海温泉湯楽里に到着出来たので良しとしたい。


湯楽里の廊下からは鳥海山が一望。気分は高揚。
しかし明日の天気は下り坂。雨が降るのは午後のために早めの行動を取ることにする。
朝食はおにぎりにしていただき夜明けとともに登山開始といきたいところ。

※鳥海温泉湯楽里は安価なのにとってもいいお宿で温泉も源泉掛け流し浴槽あり。大変満足度の高いお宿でした。

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鉾立登山口 4:24→賽の河原 5:30→御浜小屋 5:56~6:03→千蛇谷 6:59→御室小屋 8:31~38→鳥海山(新山)山頂 9:02

登り合計時間 4時間38分(休憩、道迷い時間含む)


鳥海山(新山)山頂 9:04→滑落後は記録取れず→鉾立登山口 13:14

下り合計時間 4時間10分(肘の骨折のため参考外だと思います)


合計時間 8時間48分(休憩、食事時間含む)

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宿泊した湯楽里を夜明け前に出発。
廊下から見た鳥海山は山頂までまだ見える。

AM4:00頃。鉾立登山口駐車場到着。
かなり広くて50台は軽く駐車可能かと思われる。しかもコンクリート鋪装。
そばには鉾立山荘、そして水洗トイレなど。
ドライブ中に立ち寄る展望台のような場所。
おまけに景色も抜群。山形~秋田の県境の街並。そして日本海へ続く海岸線までもきれいに見える。
ここに来るだけでも価値がある。

鉾立駐車場(奥に見える尖った山が鳥海山)

軽く身支度を済ませ。
4時24分。鉾立登山口出発。
なお、登山口には登山&下山届提出小屋もあり、大変便利。

鉾立登山口(右の小さい建物が登山&下山届BOXがある小屋)

最初はコンクリートのなだからな道。正面左手には鳥海山の山頂を肉眼で捕らえることが出来る。

コンクリートから石畳の緩やかな傾斜になっても大変歩きやすい。

また新緑に覆われた、たおやかな稜線は東北の山々特有の光景。心が和む。

しばらく登るといくつかの小さな雪渓もあり、何でもないかと思いきや実は固い~。キックしても爪先が引っ掛からないので少々難航。時間を取られる。

でも総じて賽の河原まではハイキングのような道。雨さえ降らなければ運動靴でも問題なさそう。


り始めてすぐに下を振り返る。鉾立駐車場と日本海(4:27)


最初はコンクリートの歩きやすい道(4:32)




(4:38)


東北らしい光景(4:43)


この時間はまだ硬くてキックしても足が入らなかった(5:12)


賽の河原下の雪渓横を通過(4:53)


整備された歩きやすい道をダラダラ(笑)と登っていくと賽の河原に到着する。5時30分。

湿地に小川が流れ、そして灰色の岩がたくさん点在する美しい空間。
ここはのんびりゆっくり歩くのがグット。


賽の河原付近通過(5:29)


この賽の河原を過ぎると少しだけ傾斜がきつくなるが安全に整備された道。ありがたく進む。またこの登り途中から見る下界が素晴らしくきれい。雪渓との見事なコラボレーションの賽の河原とその下には仁賀保などの街並と日本海。
あ~ぁ。このまま天気が持ってくれないかなぁ。

この登りを終えると御浜小屋だが(5:38)


御浜小屋への登りから下を振り返る(5:49) 日本海もくっきりと見える


5時56分。この傾斜を登りきると御浜小屋に到着する。
ここからの景色は絶景!
正面には出羽富士の異名を持つ優美な鳥海山の姿(この時はガスっていた(笑))。そして右手には神秘的な鳥海湖。後ろには日本海の海岸線が。
とにかくスゴいです!
またこの御浜にはトイレもあるため安心。
ここで一泊なんて贅沢かも。

御浜小屋に到着(5:56)


御浜小屋から見た日本海


御浜小屋から鳥海山頂方面を見る(5:57) ガスってる~し雲の流れが速いから風が心配。


御浜小屋から見た神秘的な鳥海湖(5:57)


ここからしばらくは稜線歩きとなる。吹きざらしの場所のため風が強い(この風があとで大事件を起こすことになろうとは・・・・・)。

しばらくはゆるやかな登り。そして下る。すると・・・・。強風が功を奏して?鳥海山が姿を現してくれたのである。

(6:15)


御田ヶ原分岐に向けての下りから見た鳥海山頂(6:19)


鳥海山の雄姿を見ながら、たおやかな稜線を歩くのは気分がいい。
このあたりは御田という名が付いているが、名の通りに御が付くような場所である気がする。

御田ヶ原分岐まで少しだけ下ると再び登りになる。しかししかし石畳で整備された道は非常に歩きやすい。

(6:23)

途中、木道が現れたりとビックリ。


八丁坂付近から後ろを振り返る(6:31) 東北らしいなぁ~


こんな雪渓出現 しかし傾斜は緩く、キックした足も入るため大丈夫(6:34)


きれいな木道出現(6:40)


6時45分。外輪山・千蛇谷分岐到着。
今日は風がかなり強いので稜線は出来るだけ避けたい。なので千蛇谷経由で山頂を目指すことにする。
しかし、ここから見る風景は見事!たおやかな東北らしい稜線と雪渓のコラボ。美し過ぎる~。

外輪山・千蛇谷分岐到着(6:45)


外輪山・千蛇谷分岐から後ろを振り返る


外輪山・千蛇谷分岐から後ろを振り返る


外輪山・千蛇谷分岐から後ろを振り返る


今は安全な新道(おそらく作られたばかりで一旦、登って下る)が作られているようだが(下山に利用した)、自分は何故だか旧道を進んでしまった。ハシゴありのちょっとだけ手を使わないければならない箇所もあり。
一旦、急斜面を下り、そして登り返す。

ハシゴを下りる(6:50)


これから渡る千蛇谷の雪渓を見る 上は完全にガスった~(6:57)


6時59分。千蛇谷到着。
ここには大きな雪渓があり、それを渡る。直登の方が近道らしいがマーキングはなく落石もたくさんある様子のため正規の道を進む。
ちなみに傾斜は緩く雪も柔らかいためアイゼンは必要なし。

千蛇谷到着(6:59)

対岸に渡ると谷沿いの道を登っていく。
すると徐々にガスが上から下りてきてあっという間に周囲を覆い、視界が悪くなってきた。風はとにかく強いし、かなりの勢いでガスが下りてくるし。
これは早く山頂へ行って早く下山するしかないなぁ。

迫力のある千蛇谷(7:06)


ここからまた雪渓 ロープに従って登る(7:12)


しばらく進むと傾斜がきつくなるが「⑦頂上へ」のような標識が出てくる。間隔からして、きっと小屋までの距離を示しているんだろう。
また、このあたりはお花の宝庫のような場所なのかもしれないが風が強くて楽しむ余裕もない。

(7:33)


(7:54)

「⑨頂上へ」の標識を越えると傾斜が緩くなりひと安心するが、それも束の間。
前には長そうな雪渓が。しかも傾斜がそれなりにある。せめて簡易アイゼンくらいは付けた方が良さそう。
でも果たしてこの雪渓を平行に渡っていいのか、それとも直登すべきなのかわからない。上に向かって少しだけ進んでみるがマーキングはない。
仕方がないので同行者を残して自分だけ雪渓を渡ってみる。
おそらく100mくらいはある。
渡りきって周囲を見るがマーキングはない(泣)。岩ゴロゴロの箇所が広がっていた。
すると後ろから若いハイカーが1名➕2名やってきた。彼らも初めての鳥海山でどちらに進めば良いかわからないとのこと。

この雪渓を超えてよいものか迷った(8:21) 視界も悪し


悩んだあげく昨日、お世話になった「鳥海温泉湯楽里」に電話してみる(携帯電話はdocomo)。すると感じの良い女性が対応して下さり、地元のガイドさんに連絡を付けて、そのガイドさんから自分の携帯に電話を掛けていただけたのだ。こんなことってある?(笑)。親切過ぎる~。
ガイドさんからは「雪渓を渡りきってとにかくマーキングを探して。そこからすぐのところに小屋があります。」とのアドバイス。
本当に本当にありがたい。
その結果は言わずもがな、小屋まで行くことが出来た。
湯楽里の女性スタッフさんとガイドさんには心から感謝いたします。


8時31分。御室小屋到着。
すると大粒の雨が降ってきた。急いでレインウェアを着込みザックにカバーを被せる。
しばらく天候を見てみると少しだけ小降りに。
なので8時38分。出発。

最初から鋭利な刃物で切ったような岩場。しかも傾斜が急でかなり危ない。マーキングかしっかりしているので迷うことはないが岩の表面が斜めっていたり引っ掛かりがなかったり鋭角な部分が表面に出ていたりで足の置き場にもやや苦戦。
また、稜線上のため風が半端てはないほど強い。しかも時折、下から突き上げるような風だし体が持っていかれる。

こんな岩場をよじ登る(8:41)

しばらく登り続けてピークのような場所まで登ったら、今度は大きな岩と岩の間を下る。
三点支持をしないと危ない。
この岩と岩の間は風雨を防げる唯一の場所。

ここを一旦下る(8:53) 風雨が凌げてホッとした場所

そこを下ったあとはまた登り返し。

かなり急な岩場をよじ登り、風雨に逆らわないように慎重に進む。よく言われる「風の呼吸を感じなから」。すると超強風の岩に登ると岩に白ペンキで「山頂へ」の文字。
ようやく鳥海山山頂に到着する。9時02分。標高2,236m。
山頂はかなり狭い。

山頂標識


山頂標識

もちろん周囲は真っ白。しかし本当に風が強いのとひょうかと思えるほどの大粒の雨。
記念撮影を終えると即、下山開始。

下山は若干なだらかと言われている外輪山側のルートを進む。

最初はやはり危ない岩場だったが胎内くぐりを過ぎ、しばらく降りると雪渓に出た。
しばらくはマーキングを頼りに進むものの途中で切れている。
しばらく周囲を探してみるがマーキングはない。
またホワイトアウトしそうなほど視界も悪化。
スマホのGPSを見ても道を掴めない。
仕方ないので来た道を戻ることにする。

胎内くぐり通過(9:09)

ちょっと胎内くぐりの手前で登りに使用した道のマーキングを発見。ショートカットすることが出来た。そのため
山頂まで行かなくても済んだ。

相変わらず突風混じりの強風と雨。身の危険も感じる。
早く下山しないと。

そして・・・・・・・・。
下から突き上げるような突風によって一瞬体が浮いた。するとバランスが一気に崩れて・・・・・。
岩場から滑落したのだった。おそらく7~8mは転がっただろう。体も10回転はしたと思う。
落ちている間は意外と冷静で「頭、打たないで欲しいなぁ~。死んじゃうのかなぁ」などと考えている自分がいた。
回転している体が止まる。すると・・・・。
意識ははっきり!
それと上から同行者の「大丈夫?」の声。
「大丈夫!生きている」と答えた。
しかし・・・。右手が痺れて力が入らない。しかも動かすと「ジャリ」っと音がする。これ、折れたな(笑)。
多少の切り傷はありそうなもののあとは大丈夫そう。

力の入らない右腕をダランとさせながら御室小屋に到着。

ヤバさを感じたので御室小屋のおじさんに
「滑落して腕を折ったかもしれません」
と言ったら
「それで?」「いったい俺に何をして欲しいんだ?」
と全く相手にしてくれない様子。それどころかケンカを吹っかけてきているのかと思うほど。
山の事故は自己責任。
でもね。骨が折れているであろう人間に対しての言葉じゃないでしょう?
後述で登場するレスキューのお兄さんとはエライ違い。

降りしきる風雨の中、同行者にロキソニンを出してもらい、すぐに飲んで急いで下山する。


それからもうひとつ。
登り時に「雪渓を渡ってよいか」迷った時に私の誘導で助けられたであろう兄さん。あの時は自分が先に雪渓を超えてマーキングを見つけてから「こっちが正しいですよ」と誘導したはず。
しかし・・・・・・。
自分の滑落を目の前で見ていたのに「私は日帰りで先を急ぎますので、このまま下山します」と言って去って行ってしまった。これには開いた口が塞がらなかった。自分だけ良きゃいいのかよ。
(結局、八丁坂付近でコイツを抜き去りましたが(笑))

気が張っているのとロキソニンの効果であろうか?
痛みはあるが我慢出来ないほどではない。
転倒しないようにゆっくりゆっくり進む。
風は相変わらず強いが御浜小屋より下は雲が取れて雨は止んでいた。

鉾立登山口まであと一時間という場所だろうか。
山形県警のヘリコプターもがみが登山道に向かって飛んできた。そしてホバリング。
結局、原因はわからなかったが雪渓付近で動けなくなった女性を救助していた。

そんな場面で同行者が・・・・。
ヘリに乗らず下山しようとしていた仁賀保のレスキュー隊員Sさんに同行者が「主人が腕を骨折したらしいんです。下山したら病院に連れていきたいんですけど、どこか診てもらえる病院を教えてもらえますか?」
というと由利組合総合病院が大きくて救急外来をやってると教えていただく。また、このSさん。自分の腕を診てくれた。医者じゃないからはっきりしたことは言えませんが救急性はなさそうとのこと。
「Sさん!ありがとうございました。おかげさまで下山後に診てもらうことが出来ました。」

あとは気力で何とか鉾立登山口にたどり着くことが出来た。
13時14分到着。

まずは下山届記入。右腕負傷の自分に代わって同行者が。

そして鉾立山荘のご主人に下山報告。
というのも仁賀保のレスキュー隊員Sさんは我々よりも先に下山し、自分の名前を鉾立山荘の方に伝えておいて下さり、もし下りて来なければ最悪の場合は救助にくるとのことだった。
このイケメンレスキュー隊員Sさんの行動が自分を元気付けてくれたのは間違いない。

そして同行者の運転で由利組合総合病院へ向かったのであった。

※由利組合総合病院での診断結果は骨折ではなかった(レントゲン7枚撮影)。しかし徐々に腫れが増す腕がどっから見ても尋常ではないので帰宅後、地元浦和の病院に行くと右肘の骨(橈骨頭)がしっかりと?折れていたのだった(笑)。
誤診でした(笑)。でも外科の先生でなかったら仕方がないかも。湿布をもらえただけでも良しと思わないとなぁ。その結果、早い処置が出来たのかもしれないし。

全治一ヶ月以上。添え木で固定してます。

この日、予約していた大平山荘をキャンセル(同行者に電話してもらいました)。本当はキャンセル料がかかるのだろうが事情が事情なのでいりませんとのことだった。
ありがたい限りです。次回、鳥海山に登るときには絶対に宿泊します!

そして病院近くの由利本荘市内のシティホテルに泊まり、翌日の飛行機で帰宅したのであった。

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今回の滑落。死んでもおかしくないような出来事でした。頭を打たなかったのが不思議なくらいです。でもこれらは全て自分の不注意によること。
しかし、いま生きているのは何かの力によって守られたとしか思えません。
ただ、ただ、ありがたいという気持ち以外には何もありません。
以前、田中陽希氏がグレートトラバースで「生きていてよかった」と言っていましたが、自分も同じ気持ちです。
もうちょっというと「生かせていただいた」というのが適切かなと思います。
折角、生かせていただけた命なのでより一層、大切にしたいと思います。

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16.7.2

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