新潟県 兎口温泉 植木屋旅館
今年はJR東日本で「ツーデイズ」なる二日間有効乗り放題の切符が発売になりました。かなりお得ですので使用させていただきました。
そんなことで以前からずっと気になっていた松之山温泉郷の兎口温泉にある一軒宿。植木屋旅館にお世話になりました。

AM8:30自宅出発。大宮、高崎、水上と快速と普通列車を乗り継ぎ、六日町に到着。川端康成の言葉ではないが、群馬県側は晴れていた空が新清水トンネルを抜けた瞬間から重い空の雪国風景と変わっていた。新潟特有の景色に出会えて何となくいい気分。
六日町からはほくほく鉄道に乗り換え、十日町の次の駅「まつだい」に到着。PM1:20。
このまつだい駅は思いの外、大きい。お土産屋や休憩できる椅子も置いてあり、びっくり。
ここでお迎えに来て下さった植木屋旅館のご主人と合流。4WDの軽ワゴン車に乗り出発。このご主人。口数の多い方ではないが、新潟県の匂い?のする方である。何となくではあるが同じく新潟県出身である自分の父親に似ているのであった。
約20分で植木屋旅館到着。ここまでの道のりは除雪されていて非常に走りやすい。当然スタッドレスタイヤは必要となるが、大雪でない限りは以外とアクセスしやすいのではないかと思う。

玄関を入ると美人さんの若女将が出迎えて下さり、一番奥の「松の間」という角部屋へ通された。
実はこの宿に入った瞬間、田舎の民家で嗅げる匂いがした。これが何となくホッとする瞬間であった。廊下なども古い民宿のような雰囲気であるが、綺麗に清掃されている。
部屋の印象は田舎の家に泊まりにきたといった感じ。豪華さは全くないが落ち着く雰囲気である。
窓からは雪で真っ白になった下界が観える。雲海を望めることでも知られる植木屋旅館。条件がそろえば、この部屋からも雲海が観えるのだろう。

ちなみトイレは共同でシャワートイレはなくウォームレット。



<内湯(庚申の湯)>
ここのお湯は日本三大薬湯と云われる松之山温泉6つの源泉のうちのひとつ「庚申の湯」。この植木屋旅館が一軒で独占して使用している。掘削自噴で毎分約12L。源泉温度は33.4℃と低い。泉質はナトリウム−塩化物泉でPH7.3。
また松之山温泉はジオプレッシャー型温泉。非常に珍しい。

玄関すぐ横に男女別の入口がある。木製のドアを開けると昔ながらの脱衣所が出迎えてくれる。

この雰囲気はなかなか味わえない。昭和40年代にタイムスリップしたかのよう。

木製のドアを横にガラガラと引くと浴槽がド〜ンと姿を現す。この風情。何だろう。何とも言えないいい雰囲気。古文風に言うと「いとをかし」。
ここの浴槽は二つ。奥の浴槽は加熱掛け流し。手前の浴槽は源泉掛け流し。掛け流し湯量はどちらもあまり多くはない。


まずは手前の源泉浴槽から。体感温度は30℃を少し上回ったくらい。冷たいといった印象はない。しかしこの浴槽の中はつるつる滑る。用心しないと間違いなく転ぶ。これは温泉成分が沈澱し滑るものと思われる。また沈澱している温泉成分を手ですくってみると綺麗な茶色をした泥のような成分がべっとりと付着する。よほど濃厚なのだろう。
お湯の色は茶褐色に濁っている。早速、源泉を舐めてみるととにかく塩辛い。そして塩辛い後に鉄臭とほんの少しの油臭が鼻から抜けてゆく。


そしてゆっくりと身体を沈めて目を閉じる。何と気持ちのいいお湯なのだろう。温度が低いため脈拍が遅くなってくる。それと同時に濃厚な温泉がゆっくりと身体に浸透していくような感覚。

創業時からほとんど変わらないと言われている浴槽(若女将に聞きました)に歴史の重みを感じながら、まったりとさせてもらう。



奥の加熱浴槽。体感温度は43℃くらい。浸かった感覚はキシキシ感がある。加温するとこんなに変わるものかと思う。しかししかし、この寒い季節。この加熱浴槽はありがたい。源泉にゆっくり浸かった後、この加熱浴槽で身体を温めてから上がらないと間違いなく風邪をひく(笑)。


上がった後の肌はスベスベ。とっても気に入ったお風呂。結局、帰るまでの間に6回くらいは入ったと思う。



















<露天風呂(翠の湯)>
ここは町営の露天風呂であるが植木屋旅館が維持管理しているらしい。なので宿泊者は無料で入らせてくれるようである。

しかし営業の期間は4月中旬〜11月末日までらしく当然今は入れない。
夕食の際、若女将と話しているとひょんなことから露天風呂の話になった。
明日、見に行ってもいいですか?と聞いてみたら「どうぞどうぞ」と言って下さった。


翌朝、雪の中、行ってみたのであった。宿から1分ほど上がったところに木造の綺麗な建物がある。これが脱衣所。向かって右側が男性用。左側が女性用。中は狭いが想像していたよりもずっと綺麗。

まずは服を着たまま浴槽まで行き、温度を確認。おそらく35℃くらいはある。
ってなわけで入浴にトライ。

入ってみると油臭+焦げ臭が目立つ。しかし東鳴子温泉高友旅館のような強烈な鼻に突くものではなく心地の良い匂い。
またお湯の色が真っ黒に見える。それもそのはず。真っ黒の湯花がびっしりと浴槽を埋め尽くしているのである。塩原元湯温泉大出館の墨の湯のような湯花。
思いの外、気持ちがよい。
しかし・・・・・。やはりお湯の温度が低く身体が冷えてくる。
意を決して上がる。身体には真っ黒な湯花が纏わりついていた。とっても寒い〜。

急いで宿に戻り、内湯の加熱浴槽に向かったのは言うまでもない。












<食事>
夕食はPM6時から、朝食はAM8時からにしていただいた。特に決まった時間はないようではある。
どちらも部屋食。

夕食はここ植木屋旅館特製のウドを保存食用に塩漬けしたものを油で炒めたものやメバルの煮つけ、白菜のいっぱい入った肉吸など。どれも美味しく、常温で飲んだ地酒と非常に良く合い、至福のひとときであった。





朝食は特に目立ったメニューはないが、味付けもよく、ついついご飯を二杯半も食べてしまった。

















AM10時少し前にチェックアウト。帰りもまつだい駅までご主人に送っていただいた。
AM10:38発のほくほく鉄道で出発。普通列車を乗り継ぎ、夕方には家に着いていた。


この植木屋旅館。旅館というよりも民宿+旅館といった感があります。女将さんも若女将もとっても気さくで、こちらも気を使わずに話をすることが出来ます。この宿自体、とってもリラックスできる空間だと思います。
お湯も素晴らしいし、料理も美味しい。


今まで、色々な温泉宿に宿泊してきましたが、このような感覚を持てた温泉宿は初めてです。ここに宿泊すれば新潟の田舎文化に足先くらいは突っ込むことが出来るのではないかという気さえします。
「何だか疲れた〜」ていう時には最適な宿のような気がします。肩肘張らずにゆっくりと歴史ある極上湯に浸かって、ゆっくりと食事を摂り、そして田舎の匂いを嗅ぎながらゆっくりと過ごす。

この宿は貴重です。いつまでも残っていて欲しいですし、自分もまたぜひ泊まりに来たいって思います。



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10.2.27〜28(宿泊)