甲斐駒ヶ岳

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飯豊の後はちょっと楽ちん登山がしたくなります。といってもアクセスが楽で食事も寝具も付いているという意味です。また今年は一度も南アルプスへは入っておらず。

山梨交通の夜行バスで行ってきました。しかし、今週までは土砂崩れの影響で芦安ではなく奈良田経由の広河原入り。仮眠時間は少し短くなりますが、眠る事が出来るのは本当に楽。

少々、雨の落ちる中、北沢峠に到着したのは朝の7時過ぎ。予約済みのこもれび山荘で受付を済ませ、余計な荷物をデポさせてもらいました。

サブザックでの登山。舐めているように思われてしまうかもしれませんが、一応レスキューシートやら笛やら方位磁石やら薬やらテーピングやら食事・水は1日分やら・・・・・。それなりに装備しているつもりです(*^^)v

        仮眠施設→広河原へ向かうバス               広河原→北沢峠へ向かうバス

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北沢峠(こもれび山荘) 7:48→双児山 9:24→駒津峠 10:07〜10:18→六方岩付近で救助→甲斐駒ヶ岳山頂 11:47〜12:17→駒津峠 13:27〜12:38→仙水峠 14:38→仙水小屋 15:08→北沢峠(こもれび山荘) 15:45

合計時間(休憩・救助時間を全て含む) 7時間57分


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7:48。レインウェアを着込んでこもれび山荘出発。
登山口はこの山荘のすぐ横。双児山経由のコースを選択。

こもれび山荘すぐ横から登り始める(7:48)

樹林帯のつづら折りを登る。時には急登もあり息がハアハアしてくるとそれに連れて一気に暑くなる。次第に雨は上がり、所々青空までも見えてくる。早速、レインウェアを脱ぐ。
登山道はかなり整備されている感があり登りやすい。周りはまだ真っ白だか時折、周囲の山々の裾野が見えてくる。

樹林帯を進む(8:31)


急登を進む(9:01)

樹林帯を抜けて森林限界と思ったらそこが双児山のピーク。標高2,649m。9:24着。
まだ景色は白いが、たまに甲斐駒ヶ岳の白い山肌らしきものも目に入ってはくる。

森林限界に入ってくる(9:22)


双児山ピークから見た甲斐駒ヶ岳

しばらく休憩後、さらに進む。一旦、ぐっと下ってからがれ場急登。この急登を進んでいるうちに雲が急速に上がっているのがわかる。

鋸岳が姿を現す(9:33)


画像だと急登感がわかりづらい(9:45)


駒津峠間近を進む自分(笑)

息が上がりそうだなぁって思ったころにピークに到着。ここが駒津峠。10:07着。
ここではゆっくり休憩。
事前情報だとここからの景色は360度の絶景らしいが、雲から出たり入ったりする茶色と緑のコントラストが荒々しい鋸岳。そしてこれから進む方向には甲斐駒ヶ岳の山頂付近が徐々に顔を出してきたのである。

奥の山は鋸岳

実はこの甲斐駒ヶ岳。山頂直下の直登コースを除けばこの駒津峠〜直登コース分岐までが一番の難所だと思われる。鋭利な岩がゴロゴロし、これの急斜面を両手両足を使い、登り下りするのである。ストック使用はあまりおすすめではない(危なくて使えない箇所多し)。ただ急がずに、山自慢のお得意なおっさんのようにカッコつけず、とにかくゆっくり進めば大丈夫だと思う。

駒津峠出発直後に見えた甲斐駒ヶ岳(10:19)


六方石少し手前の岩ゴロゴロ道(10:24)




なかなか手強い岩場を進む(10:34) ここを通過して間もなく・・・・・・

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実は実はここで滑落?事故が・・・・。ちょうど六方石付近に差し掛かった時。すれ違う自分に対しておじさんが「三角キン持ってませんか」と言ってこられた。
どうやらすぐ先で転んで肩付近を骨折したらしいと。
急いで向かうと唇と左腕を震わせていた男性が携帯で電話をしていた。しかもやっと話している雰囲気。
これは尋常ではない。
よく聞いてみると電話の相手は警察。救助要請をしていた様子。相手は山梨県警かと思いきや登山道自体は長野県なので長野県警と話をしていた。

自分は早速、うなり声をあげて痛がる彼にロキソニンを飲ませ(もちろん本人に意思確認はしました)、腕を吊って欲しいという彼が楽になるよう同行者から長さ調整可能のベルトをもらい(同行者ナイス!)、彼に言われるがままに1mmずつくらいに長さを調整。彼が一番楽な位置に固定。しばらく待つことにする。

彼は黒戸尾根から登り、北沢峠に下山する予定だったらしい。
それから稜線上で寒くなるからレインウェアを羽織ってもらう。

その間にも「自分が彼のリュックを背負って駒津峠まで行き、ヘリを待つか?でもあの岩場を登るには今の彼には無理だろう」などいろいろと頭の中を考えがめぐる。

不謹慎ではあるが、我々もこのあとは山頂に向かい、こもれび山荘に言われているタイムリミット午後4時までに戻らないといけない。

そんなことを考えていると下山してくる山慣れした感じのご夫婦(単なる二人連れかも(笑))が通りがかり、その方に後のことをお願いすると快く笑顔で引き受けて下さった。本当にありがたい。
それから抜いたり抜かれたりだった若い男女四人のパーティーも後から我々に追い付き、一緒に心配してくれた(レスキューシートを恵んでいた)。

中には我先に!と行ってしまう人も多いのも事実(今回も野次馬根性で様子だけ聞いて去ってしまう人もかなりいましたし、自分の少し前を歩いていた人達なんかタッタと行ってしまいました)。しかし、「私たちは下山するだけだからあとは任せて」と言って下さったご夫婦(単なる二人連れかも(笑))。それから一緒になって心配して応援してくれた男女のパーティー。
皆さん。本当に本当にありがたかったです!!!!!

まだまだいい人がいっぱいいることに嬉しさを感じましたし、冷たい人も意外と多くいるんだなぁということも知りました。なんだか複雑な心境です。

山は自己責任と言うけれど自分の手助けで救える命ならば救わなければいけない。その場に居合わせたことは単なる偶然ではなく必然のように感じます。なので居合わせたら必ず手助けをするのが使命。自分はそう考えます。


怪我をした彼としばらく共にした場所(下山時に撮影)

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ここからは少し急ぎ足で進む。山頂への直登コースとの分岐を過ぎ、巻き道を登る。巻き道と言ってもそれなりに急登。奇岩である白い花崗岩の間を縫いながら進むのは非常に面白い。
中央アルプス空木岳よりスケールを大きくしたのが甲斐駒ヶ岳かな。

登りについては小股でちょこちょこと進むようにすれば意外と登りやすい。

直登コースと巻道コースの分岐近く(11:09)


山頂方面を見上げる(11:11)


面白い道(11:15)


緑のピークが山頂(11:31)


山頂まであと少し(11:40)


11:47。甲斐駒ヶ岳山頂到着。標高2,967m。
展望は真っ白。しかし、しばらくすると鋸岳〜駒津峠方面〜鳳凰三山のガスが大分、切れてきた。
ちょうどその頃、直登コースからさっき一緒に怪我人を心配していた男女四人のパーティーが上がってきた。

山頂標識と三角点


意外と広い山頂

ランチタイムにしようとパンを食べているとヘリの爆音が。

山頂から見てました 長野県警ヘリの操縦もスゴイです

駒津峠方面を見るとさっきの怪我した彼の辺りをホバリングしている。救助のヘリだ!
ガスが切れたり立ち込めたりで大変そうであったが、なんとか吊り上げた模様。本当にホッとしたし、この時は叫びたいくらいに嬉しかった。これで一安心。
※ネットで調べたらヘリはやはり「長野県警」で伊那市の病院に無事に収容されたらしいです!

山頂は意外に広く、祠まである。

少し待ったものの山頂からの景色もあまり良くないため、12:17。下山開始。

下山開始直後(12:17) 雲から顔を出す摩利支天


下山中、甲斐駒山頂付近を見上げるとザックを背負った人のような雲が(12:33)


下山道と仙丈ケ岳(12:36)


下山してきた方向を見上げる(12:36)


六方石と仙丈ケ岳(12:46)

するとみるみるうちに雲が上がっていく。次第には仙丈ヶ岳や間ノ岳、北岳の9合目あたりまでも見えてきた。天候が不安定なせいか、長野県側は雲が多く山梨県側は比較的天気が良好。

また上を見上げると花崗岩の白色と空の濃青とが相まって素晴らしい光景を作っている。
おまけに面白い形をした雲までも出現。

最近であるが、ようやく知ったことがある。それは登り時よりも下山時の方が発見が多い。
そのため、最近は下りが非常に遅い(笑)。樹林帯に入るまではペースを上げられない。


六方石と駒津峠(12;55)


手を使わないと登ることが出来ない岩場(13:05)


振り返り甲斐駒を見る(13:13)

少し滑りやすい花崗岩の砂地を下り、岩場を通過し、あっという間に駒津峠まで来てしまった感がある。
もうこの頃になると360度に近い展望。甲斐駒ヶ岳〜鋸岳〜仙丈ヶ岳〜間ノ岳・北岳〜鳳凰三山と。
素晴らしい!甲斐駒ヶ岳ってやっぱりかっこいい山だなぁ。

駒津峠から見た仙丈ケ岳

下りは仙水峠経由で進むことにする。この下りの傾斜はなかなかの急坂。しかし、北岳・間ノ岳や鳳凰三山を見ながらの下山なので気分は最高。膝に負担がかからないように「我流ムーンウォーク」で進む。これを端的に説明すると「着地の際にふわっとしたイメージを持つ」のである。

急斜面の仙水峠へ向かう下り(13:42)


仙水峠へ向かう下りから見た北岳〜間ノ岳(13:51)


仙水峠へ向かう急な下り(13:56)


仙水峠へ向かう下りから見た雲上の鳳凰三山(14:01)


南アルプスらしい光景(14:06)

14:38。仙水峠到着。
岩ゴロゴロのちょっと異様な光景。上を見上げると雪を被ったかのような甲斐駒ヶ岳と摩利支天がきれいに見える。

仙水峠付近から見た甲斐駒と摩利支天

ここからしばらくの間は岩ゴロゴロの道。このあたりの光景もスゴい、珍しい。蓼科山山頂付近のような箇所がずっと続く。

仙水峠から仙水小屋付近までこんな風景が続く

そんな道をしばらく進むとイラストレーターの鈴●み●さんとすれ違う。ひとりで仙水峠まで散歩?に来られていたよう(ブログに書いてありました)。
樹林帯に入って傾斜の緩い道をしばらく進むと刺身で有名な?仙水小屋に到着する。水はじゃんじゃん出ているし、すでに多くの宿泊の方が外でワイワイやっていた。

一旦、急坂を下るとあとは遊歩道みたいな道。途中、川を渡ったり気持ちがいい。

15:34。長衛小屋通過。
きれいな小屋。ここにはテン場があり、カラフルな沢山のテントが並んでいた。

ここからは車も走れるようなダート道。やや登り。

15:45。無事にこもれび山荘到着。
この頃には持ってくれた雨が少しだけ落ちていた。

こもれび山荘到着

朝イチで受付していたせいか、一階一番奥の下段が我々の寝床。
噂通り、各寝床をカーテンで仕切ることが出来るため、プライペート空間を作ることが可能。ライトもありで快適。ここにシャワーがあれば、普通のロッジと何ら変わらない。
トイレは水洗。夕飯は17時から。一巡目。メニューはその日にこねたハンバーグと鶏肉のスープ煮?。味は美味い。山小屋ではかなり高レベル。
自分の中では剱沢小屋の次くらいにはくるかなぁ。しかし、ここは場所に恵まれているから当たり前って言えば当たり前かも(笑)。

              一階の様子                   我々の寝床(カーテンで仕切ること可能)


                 夕食                              朝食弁当

ちなみに翌朝の飯は全員弁当になる。朝4時〜6時まで味噌汁のサービスがあり、セルフでお弁当と一緒に食べる。ちょっと量が少ないいかなぁ。

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今回の甲斐駒ヶ岳。いろいろな経験をさせてもらいました。救助された彼はどうなったかなぁ。

この山は意外と大変かもしれません。岩場あり急登あり、いい訓練にもなると思います。

しかしなんといっても雪を被ったかのように見える花崗岩で出来た山肌です。
まさに人間では到底作ることの出来ない芸術品。素晴らしいです。

また下山中には天気が回復。周囲のたくさんの名山を見ることが出来ましたし、無事に行ってくることも出来ました。

みんなみんな本当にありがたいことです。

明日は仙丈ヶ岳。天気はどうかなぁ。


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14.8.23
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